最近母親が余計なものを買ってしまいます

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最期まで母を守りたいから

最期まで母を守りたいから

1970年、このニュータウンができた頃は、若い夫婦と幼い子供がいっぱいで街は活気に満ちあふれていたそうです。しかし、ある秋の日私が訪れた街路は昼間だというのに人影もまばらで、日当たりのいい公園で寝そべる野良猫が、一種ののどかささえ醸し出していました。

私は同じ形をした灰色がいくつも並ぶ公団住宅の迷路に迷って、約束の時間に5分遅れてしまいました。やっと目的地にたどり着き玄関のベルを鳴らすと、満面に笑みをたたえたお婆さんが現れました。

「まあまあ、待っとったんよ!」

そう言うと、お婆さんは私の手を引いてドアの中に招き入れました。するとその陰から、困惑した表情の中年の男性が顔を出しました。

「こういう調子で困るんですよ……。榊原さんですね?」

「ええ、そうです」

私は名刺を出してあいさつをしました。

その中年の男性が依頼者のKさんでした。一人暮らしのお母様が、近頃、訪問するセールスマンの誘いに乗って何でもかんでも買ってしまって困っているという内容のご相談でした。

「ほら、このとおりで……」

Kさんが指し示したとおり、部屋にはまだ梱包されたままの商品が山積みになっています。

「いちいち事情を話して解約するだけで、一苦労でしてね……」

Kさんは顔を歪めてつぶやきました。

最期まで母を守りたいから

Kさんがお母様の異常に気付かれたのは、お母様の笑顔に一種の違和感を覚えた時だったそうです。ある日、数ヶ月ぶりに会ったお母様から、息子に対するいつもの笑顔ではないものを感じられたそうです。その前後から、やたら訪問販売を利用するようになっていたそうで、近所のスーパーに買い物に出かけたまま帰って来られなくなって、警察からKさんに電話がかかってきたのもその頃のことだそうです。

私はKさんに法定後見制度の説明をしました。Kさんは自分が後見人となって最後まで母を守るとおっしゃいました。私は必要書類や費用の説明をし、申立書類作成を受任しました。

法定後見の場合、事例によっては後見人の審判が下りるまで申立てから半年以上かかってしまうケースもあるため、今、私は急ピッチで仕事を進めています。

一刻も早く審判が下りて、お母様もKさんも安心して暮らせることを願って――。

(この事例は事実をもとに構成したフィクションです)

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